歯科特殊健康診断とは?
事業者は、塩酸・硝酸、硫酸など歯や歯茎に有害な物質を取扱う業務に常時従事する労働者に対し、その業務開始前と6ヶ月に1回、歯科医師による健康診断を行わなければなりません。
これを歯科特殊健康診断(歯科特殊健診)や酸取扱者等の歯科健康診断、また主な症状名から酸蝕症健診と呼びます。
労働安全衛生法>第66条>第3項
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057
事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、歯科医師による健康診断を行なわなければならない。
労働安全衛生法施行令>第22条>第3項
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057
有害な業務は、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗ふつ化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務とする。
労働安全衛生規則>第48条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032
事業者は、(・・・略・・・)の業務に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際、当該業務への配置替えの際及び当該業務についた後六月以内ごとに一回、定期に、歯科医師による健康診断を行なわなければならない。
歯科特殊健診の結果、有害な業務により労働者が酸蝕症等になっていることが認められた場合、事業者は就業場所の変更・作業の転換・作業環境測定・設備の設置などをしなければなりません。(労働安全衛生法>第66条の五)
歯科特殊健康診断で主に確認する酸蝕症とは?
酸蝕症健診とも呼ばれるように、歯科特殊健康診断で主に確認する症状は酸蝕症です。
強い酸により歯が溶けてしまう症状で、
- みかんやグレープフルーツ・レモンなどの柑橘類、梅干しなどの食べ物
- 炭酸、酢、栄養ドリンク、ワイン、スポーツ飲料などの飲み物
- 酸性の薬剤・ビタミン剤やサプリメント
- 胃散
などに歯が長い時間触れることによっても起こります。
そのため歯科特殊健診では、歯を見るだけでなく
- 上記のような飲食・薬等の摂取状況
- 逆流性食道炎などの症状
- 業務で取扱かっている有害な物質の内容、換気・マスクなど業務の状況
これらを総合的に判断し、その酸蝕症が業務により起こっているものかを歯科医師が判断します。
歯科特殊健康診断の対象者は?
上述の通り、歯科特殊健診の対象となる有害な業務は、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗ふつ化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務とされています。
例に挙げられている塩酸など6つの物質は、いずれも取扱に注意が必要なものですが、様々な用途で広く用いられています。
また、その他には、
- 塩素:酸蝕性を引き起こす可能性がある
- 水銀及びその化合物:口腔粘膜障害を引き起こす可能性がある
などが歯や口の中に有毒と考えられます。
事業者様ご自身で判断がつかない場合は、所轄労働基準監督署に確認してください。
歯科特殊健康診断の報告義務とは?
歯科特殊健康診断は酸等を取扱うすべての事業者の義務ですが、これまでその結果を労働基準監督署に提出する義務があるのは、労働者50名以上の事業者のみでした。この報告義務の対象範囲は、通常の健康診断と同様です。
労働安全衛生規則>第52条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032
常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、(・・・略・・・)の健康診断(定期のものに限る。)を行なつたときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書(様式第六号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
しかし、厚生労働省の実施したアンケート(歯科健診実施状況の自主点検事業)で、酸等を取り扱っていながら歯科特殊健診実施していない事業所が多く、労働者50名未満の事業所では特に低い実施率となっていました。
そのため、2022年10月1日より労働者の人数にかかわらず、すべての事業所に結果を労働基準監督署に提出する義務が課せられました。
また、歯科特殊健診専用の報告書も新たに作成されています。
歯科特殊健康診断の実施方法
歯科特殊健診の実施方法としては、
①事業者が地域の歯科医師会などに訪問集団健診を依頼する方法
②労働者が歯科医院に足を運ぶ方法
の主に2種類があります。
しかし、①訪問集団健診は最低人数が決まっており、対象となる労働者の数が少ない場合は使えないことが多いでしょう。
また、②労働者が歯科医院を予約して行くのは面倒で、会社として特別休暇を設けるかどうかも問題となることが多いでしょう。
これに対し、スクリエの開発したオンライン歯科特殊健診は対象となる労働者が少ない事業者様でも、事業所で、自宅で、労働者の負担を少なく歯科特殊健診を受けさせることができます。
費用も1回1名あたり税込3,000円〜と使いやすい価格です。(別途、初期費用または訪問費用がかかります)
歯科特殊健診に負担を感じている事業者様は、オンライン歯科特殊健診のページをご覧ください。
記事監修者 歯科医師/岡本孝博
高知県の僻地出身
高校卒業後、アパレル業界へ。デザイナーを経験後、歯科医師になる。
2008年より、京都大学医学部附属病院に勤務。基幹病院病棟医長/外来医長、地域基幹病院歯科口腔外科の所属長、地域医療連携における部門部長、難治性外来非常勤医師を務める。また、研修指導医取得はじめ数々の認定医資格を取得
2018年に㈱スクリエを創業
共同記事監修者 管理栄養士/西岡愛梨
管理栄養士として大手医療法人の病院や介護老人保健施設に勤務しながら、大阪市立大学大学院へ進学。当時の研究テーマで日本病態栄養学会の若手研究特別賞を受賞した過去をもつ。現在は後期博士課程に在籍しながら、京都大学や地域中核病院での研究調査に携わっている。